体育が苦手で、そのことをごまかそうとする「雄志」。お母さんからの一言でやる気を出し、苦手な体育を「練習」することで乗り越えました。「へんしん」することができた「雄志」について考え、自分自身の「へんしん」についても考えさせる授業づくりを行いました。
雄志が「へんしん」できた理由を原稿用紙に書かせ(200字以内)、ペアで意見交換させました。
次に「どうして雄志は『へんしん』できたのだろうか?」を学習問題に据えて、子どもたちから意見を出させる授業展開を考えました。次の図は、事前に想定した子どもたちからの意見です。(黒字のところ.青字や赤字は指導者からのキーワード)
実際に子どもたちから出たのは次の通りです。数が少ないのは、時間が足りなかったためです。
このあと、「自分が『へんしん』したいこと」を原稿用紙に書かせています。(200字以内)
「お母さんの言葉が響いたから」と「練習したから」の間に、「自分で変わろうとしたから」というのがあります。
「おそらく雄志は、以前から変わりたいと思っていたから」「そのきっかけが母親の言葉だった」「雄志には練習を『毎日』続ける生真面目さがあった」「応援する『家族』『みんな』『先生』がいた」という4つの要素の重なりが、雄志の「へんしん」につながったのではないかと考えられます。
「へんしん」はいくつかの要素の重なりにより可能となることが分かりました。
今回は、雄志の「へんしん」の「きっかけ」となった、母親の「説得(=説得的コミュニケーション)」について考えてみたいと思います。
説得的コミュニケーションとは…
説得的コミュニケーションの手順
1)注意:説得に使われるメッセージが、非説得者の注意を引く。
2)理解:メッセージが理解される。説得される人の理解度に応じている(優しいメッセージ、検討する価値を持つメッセージ)
3)受容:理解されたメッセージが受容される。
新しい態度をもつことによって生じる報酬が、これまでの態度で得た報酬を上回る。
既存の態度(不合理な面)<態度変容による報酬
説得を受け入れないと説得者に「拒否」されることへの「恐れ」。
4)記憶保持:説得されたことが「記憶」される。
つまり母親からの説得が、「注意を引き」「理解され」「受容され」「記憶保持」されたことが、雄志の「へんしん」につながった、ということです。これらの考えは「社会心理学」の研究成果を参考にしています。
分かったようなつもりになっていた「説得」の意味が、社会心理学的にこのように捉えられいることを知ったのが、今回一番の収穫でした。
実験心理学・社会心理学などの科学的方法・知見を用いて、人間の心と行動に関する事実的問題を探究する「道徳心理学」という分野があるそうです。今後、「道徳心理学」についても考えていきたいと思います。
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