教員研修

HOME学校生活教員研修4年道徳1「ドッジボール」で「同調」について考える [ 長谷川 洋 ]
2022.04.17
4年道徳1「ドッジボール」で「同調」について考える [ 長谷川 洋 ]

ボールが当たったのに「セーフだ!」といいはる「一郎」。ボールを当てた子が、アウトだといっても全く聞き入れません。周囲の子も「力が強く、勉強も運動もできる」一郎に味方してしまうという、物語文「ドッジボール」で道徳授業をおこないました。

指導者の朗読を聞いた後、「どんな出来事だったのか」を黒板で整理します。「信二」が投げたボールを「いく子」がキャッチし、「一郎」に当てたのだけれども、「信二」は「バウンドしたからセーフ」といいはっていることを確かめました。出来事を正しく理解していないと、肝心の「考える」ことにつながらないからです。

次に、原稿用紙を配布して、右側の200字のスペースに、初発の感想(初めて書く感想)を書かせました。【個の学び】
次に、となり同士でお互いの感想を紹介し合わせました。【協働の学び】

そして、指導者から「学習問題」を提示しました。
学習問題:どうして見ていないのに(周囲の子は)セーフといったのか?

エックスチャートを使って子どもたちの考えを整理しました。
事前に子どもたちの考えを予想してつくってみたのが次のエックスチャートです。
子どもたちの考えは黒字で示しています。青字は指導者から提示するキーワードです。

予想していなかった子どもたちの考えに「(一郎は)チームのためを思ってセーフだといった」というものがありました。
それならば周囲の子も「チームのためにセーフだといった」となりそうですが、相手側の子(信二、幸太)まで「セーフだ」といっているので、それは違うでしょう、という話になりました。

最後に指導者から提示したキーワードは「同調」。
「教師用指導書」によると、いつもは口をきかない登が、勇気を出して「バウンドしていなかった」と証言したことや、なんでも一郎に賛成する周囲の子たちをたしなめる場面を「中心発問」として取り上げています。
しかし今回は、子どもたちを「周囲の子」に見たて、「同調」してしまう心理に迫る授業展開を計画しました。

授業の終末に、原稿用紙の左半分に授業を通して考えたこと・感じたことを書かせました。
初発の感想と比較することで、今日の授業による子どもたちの変容を知ることができるのです。

子どもたちの感想の変化
「一郎はわがまま」→「反対できないのは分かるけど、困ったときは人にいう」
「(「いく子」に賛成した)明が一郎はアウトだといったのは勇気がある」→「信二や幸太はひどいけれども、人それぞれ考えがあると思った」
「チームのためにセーフといった」→「身近に「同調」していることに気づいた」
「一郎はずるい、登はすばらしい」→「みんなから同調される一郎は、ひょっとすると優しい一面ももっているのかもしれない」
などがありました。

授業の振り返り
今回、「同調」というキーワードを通して、「道徳」と「社会心理学」の関係を考えることができました。
「同調」する理由に「好かれたいという要求を満足させるため」「正しくありたいという要求を満足させるため」があるそうです。周囲と意見が一致することで、「正しいと考え、安心する」心理が働くそうです。
今回の授業の「ねらい」の「正しいと思うことは、自信を持って行おうとする態度を育てる」ためには、「同調」を理解することがポイントであることに気づきました。

略案 4年道徳「ドッジボール」pdf

一覧へ戻る
TOP